MT車にあるクラッチは操作が独特でMT車の運転を難しくしている要因であると考えているドライバーは多くいると思います。
ですがこれは半分正解で半分間違いなのです。
MT車の運転で本当に難しいのはクラッチ操作ではなくアクセル操作であり、MT車がスムーズに運転できない場合のほとんどが不十分なアクセル操作に原因があります。
クラッチ操作は簡単でアクセル操作は難しい
クラッチ操作は簡単
クラッチ操作は至ってシンプルであり簡単です。
なぜならクラッチ操作は以下のたった3つの操作しか行わず、またそれらの操作に繊細さはほとんど必要ないからです。
- 完全に切る
- 完全に繋ぐ
- 部分的に繋ぐ(半クラッチ、通称:半クラ)
パターン1と2のクラッチのon/offはペダルを完全に踏むか踏まないかの操作なのでとても簡単です。
パターン3の半クラはパターン1と2の混合みたいで難しく感じますがほとんど繊細な操作は必要とされません。
え?うそ?とお思うかもしれませんが、それは教習所で習うクラッチ操作の方法を想像しているからだと思います。
教習所ではクラッチペダルをゆっくり上げて徐々に半クラッチにすると教わるかと思います。
ペダルを上げる速度が速すぎるとエンストしてしまうのでそ〜っとゆっく〜りペダルを上げる繊細さが必要です。
でもベテランMTドライバーはクラッチペダルをゆっくり操作しません。
自動車教習所で教わるクラッチ操作方法は公道では使えない
教習所で教わる半クラの方法は「クラッチペダルをゆっく〜り上げて徐々にクラッチを繋ぐ」と教わるかと思います。
クラッチの繋ぎ加減が分からない教習生にはエンストせず確実に半クラッチができるようにするため教習所ではこのような方法で教えます。
しかし、このやり方はクラッチ操作が非常にゆっくりなので発進までに少なくとも5秒はかかります。
公道で後続車を5秒以上も待たせてしまうとクラクションを鳴らされてしまう可能性が高いためこの方法は公道では実用的ではないのです。
半クラッチは「範囲」ではなく「点」で扱う
ベテランMT車ドライバーは半クラッチをどのように行っているのか。
それは一気にペダルを上げ、一瞬で半クラポイントまで持っていきそのままペダル位置は動かさずをキープし半クラを続け発進します。
ベテランドライバーは教習所の方法のように徐々に半クラッチにするように半クラを「範囲」で扱うのではなく、ある一点の「点」で扱います。
つまるところ、クラッチ操作は完全に切る、完全に繋ぐ、半クラにするのどれをとってもべダル位置は「点」でしか扱わず、クラッチペダルはこの3点をサッサッサッと素早く行き来するだけの操作になります。
なのでクラッチ操作はシンプルな操作なのです。
一気に半クラにする方法は以下の記事で詳細に解説してますので参考にして下さい。

この記事で書かれていることをマスターするとクラッチ操作が嘘のように簡単になりエンスト知らずになります。
クラッチ操作がストレスフリーになるとやがてアクセル操作の難しさに直面するようになります。
実はアクセル操作は難しい
アクセルはただ踏むだけでクラッチのようにエンストと言う操作ミスが無いため簡単と思われるかもしれません。
確かにAT車であればその通りです。
ですがMT車となると難易度は跳ね上がります。
なぜならMT車には「空吹かし」があるからです。
この空吹かしは非常に繊細なペダル操作が要求されるため難易度は非常に高いのです。
空吹かしの目的はエンジン回転数を上げエンジンパワーを上げた状態で半クラする事で力強くスムーズな加速を得るために行います。
しかし、エンジン回転数をただ上げれば良いわけでなく、発進に無駄なく必要なだけの適切なエンジン回転数とする必要があり、そこに繊細なペダル操作が要求されるのです。
アクセルとエンジンとの間にはクセがある
アクセルはペダルを踏めば踏むほどエンジンの回転数が上がるというシンプルな仕組みなので狙ったエンジン回転数にするのは一見すると簡単に感じられます。
しかしアクセル操作に対するエンジンの挙動にはクセがあり、ペダル操作をしてからエンジン回転数が上がるまでに「ラグ(時間差)」があり、ペダル操作に対してエンジンの応答がワンテンポ遅れます。
このラグの発生はエンジンの特性上仕方が無く、このクセを踏まえてペダル操作を習得する必要があるわけですが、このラグはペダル操作感覚を養う上での大きな妨げとなりアクセルの扱いに苦労する事になるわけです。
一発のペダル操作で狙ったエンジン回転数にするのは難しい
前述の通り、アクセルとエンジンとの間のラグがあります。
これによりペダルを踏んでもエンジン回転数が思ったよりも上がらずペダルを踏み増したら想像以上に回転数が上がってしまったり、逆にラグを見越してエンジン回転数が上がるのを待ってみたが全然回転数上がらなかったりと回転数の調整に苦労させられることは多々あります。
自動車教習所では発進の際に「最初にアクセルを踏みxxx回転までエンジンを回して…」とさりげなく狙ったエンジン回転数にアクセルペダルを操作するように教わると思いますが、実はこれはなかなか難易度が高い要求でありベテランドライバーでもなかなか苦戦する操作なのです。
なので教習生の方は素早く上手くできなくてもあなたの運転適性が低いわけではないので気を落とさないで教習に集中しましょう。
習得すべきMT車のアクセル操作
クセのあるアクセル操作ですが、素早く自在に操れるようにならないと上手くMT車が運転できないと言う訳ではありません。
ドライバーのレベルに応じて必要になるアクセル操作パターンは決まっており、習得すべきスキルは限定的なのでそれさえ押さえれば問題ありません。
闇雲に練習してアクセル操作の習得に四苦八苦しないためにドライバーのレベルに応じた練習を紹介します。
初心者ドライバーが習得すべきアクセル操作
初心者ドライバーが習得すべきアクセル操作は発進の際の最適な空吹かしです。
最適な空吹かしとはスムーズな発進で必要とされるエンジン回転数にすることであり、その回転数はほぼ決まっています。
なのでその回転数になるようにアクセルペダルを一発で素早く踏めるようにする練習をします。
空吹かしするエンジン回転数の目安ですが、だいたい2000rpmくらいになります。
練習方法は簡単です。
最初はゆっくりアクセルペダルを操作して徐々にターゲットの回転数まで上げて行きペダルを止めます。
そのあとはペダル操作を徐々に速くして、最終的には素早く一瞬でペダル操作ができるようになれば練習完了です。
前にも述べた通りアクセル踏んでからエンジン回転数が上がるまではラグがあるので、どんなに素早くアクセル操作をしても必ずエンジン回転数はワンテンポ遅れて上がります。
なのでこのワンテンポの遅れを自分のアクセル操作の遅れと勘違いして極限のスピードでアクセル操作できるようになるまでいつまでも練習してしまうことのないように注意しましょう。
因みに練習方法は簡単ですが、習得は結構難しく時間を要します。
人の体は動(力を入れる)から静(力を抜く)または動は意外と簡単ですが、静から動は意外とスムーズに動かないものです。
スポーツ経験者だとわかるかもしれませんが、何か動作をする時に予備動作をすると本動作が上手く動けるというのを経験した事があるのではないでしょうか。
アクセルもクラッチも同じでクラッチは動から静なので意外とスムーズに操作できますが、アクセルは静から動なので意外とスムーズにできないのです。
なので簡単な操作にも関わらず慣れるのに練習に時間がかかります。
ベテランドライバーが習得すべきアクセル操作
ベテランドライバーが習得すべきアクセル操作は「ブリッピング」です。
ブリッピングはアクセルをポンと一瞬だけ踏み込みエンジン回転数を一瞬だけ素早く上げる操作です。
この操作が必要になるのはシフトダウンのときになります。
同一速度において一段下のギアは今のギアよりも多く回す必要があるため、シフトダウンの際はブリッピングをして意図的にエンジン回転数を上げ、下のギアの回転数に合うようにしてあげる必要があります。
シフトダウン自体が上級者スキルなのでここでは解説を割愛します。
ベテランになるとそういう操作もするんだなくらい程度に覚えておき、ある程度上達したら習得に挑戦してみてください。
まとめ
クラッチは操作が難しいと言う先入観によりMT車の運転を難しくしている原因とされがちですが、実際はアクセルにクセがありMT車がスムーズに運転できない要因になっている事が多いです。
- クラッチ操作は切る、繋ぐ、半クラの3点間のペダル移動だけなのでシンプルで簡単
- アクセル操作はクセがありエンジン回転数の応答にラグがあるので実は操作が難しい
クラッチ操作の習得の方がアクセル操作よりも簡単なので、まずはクラッチ操作をマスターし無意識に操作できるようになった後、クセのあるアクセル操作習得に時間をかけるとMT車の運転も早く上達します。
多くのドライバーはアクセルは踏むだけなので練習は不要、クラッチだけ練習すればいいと思ってクラッチばかりに集中しがちになります。
しかし現実は、クラッチ操作はコツを掴むかそうでないかであり取得にさほど時間は必要なく、一方アクセル操作は感覚を養う練習が必要なのでクラッチよりも時間を要するものです。
これを知らずに練習を闇雲にやると非常に多くの無駄な時間を過ごす事になりますので、本記事を読む事で少しでも無駄な時間が無くなればと思います。
それでは良いカーライフを。