前回の「実践編〜その壱〜」では公道での通常発進について練習しマスターしました。
平地の発進であれば思うようなタイミングで素早く発進することができるようになりました。
今回は「坂道発進」になります。
MT車の運転で多くの人がつまづくポイントは「半クラッチ」と「坂道発進」の二つです。
半クラッチは前回の通常発進でマスターしましたので残る坂道発進をマスターすればMT 車の運転がぐーんと楽になり、楽しくなります。
それではさっそく見ていきましょう。
MT車の坂道発進で多くの人がつまづく理由
MT車の運転において坂道発進で多くの人がなぜつまづくのかと言うと、平地の様に普通に発進しようとするとブレーキを離した瞬間からズルズルと車が下がり始めアクセルを踏んで半クラッチにする間にどんどん車が後ろに下ってしまい発進する前にブレーキを踏まざるを得ない状態になり結局のところ発進ができない事態に陥るからです。
またこの車が後ろにさがることが後続車へぶつかるかもという焦りと恐怖を生み普段できていた半クラッチすらまともにできなくなり、エンストや大きな空吹かしをしてしまったりと恥ずかしい思いをし自信を無くしさらなる悪循環に陥ってしまい坂道発進に苦手意識が生まれてしまいます。
教習所の教え通りの手順ではだめなのか
自動車教習所で習うのは誰にでも確実に坂道発進をさせることのできる手順ではあるのですが手順が多く、初心者では素早い発進ができないため実用的ではありません。
教習所の手順がダメとかではなく、急な坂道ではベテランでも使う方法なのですが、この手順を素早く行なうのは何気に難しいです。
教習所で教わる坂道発進の手順は以下の通りです。
- クラッチを切りフットブレーキで停止
- サイドブレーキを引く
- フットブレーキを離す
- ギアを1速に入れる
- アクセルを踏みエンジン回転を一定にする
- クラッチを除々につなぎ半クラッチ状態にする
- サイドブレーキを解除
- アクセルをさらに踏み発進
この手順の場合、初心者では手順5〜7に10秒くらい要するかと思います。
いくら初心者相手と言えども10秒以上も待たされればかなりの確率でクラクションを鳴らされるでしょう。
そうなったらもはや発進どころではないてす。
普通に発進するとズルズル下る、教習所通りに発進すると時間がかかると、初心者にとって坂道発進に対してなす術無しとなります。
初心者は坂道発進をどう克服したら良いのか
多少の練習は必要になりますが、坂道発進が楽になる裏ワザがあるのです。
それはズバリ「アイドリング発進の力を使う」です。
前章の基礎編で一瞬で半クラッチにする練習をしたときにアイドリングで発進する練習をしましたが、この進む力を使うのです。
また、一瞬で半クラッチにする方法も前章で習得済みなので何回かやればすぐに発進できるようになります。
アイドリング発進の力を使う方法を取り入れた坂道発進の手順は以下の通りです。
- クラッチを切りフットブレーキで停止
- ギアを1速に入れる
- ブレーキを踏んだまま半クラにしてそれをキープ
- ブレーキを離しアクセルを踏み発進
どうでしょう。手順がシンプルでこれなら慣れていなくても僅かな時間で発進の準備ができると思います。
この手順のポイントはサイドブレーキで後退するのを防ぐ代わりにアイドリングの半クラッチの進む力でカバーするところです。
アイドリングの僅かなエンジンの回転の力なので4でブレーキを離した時にサイブレーキの時の様に全く後退しないという保証はないですが、余程の急傾斜でない限りほとんどと後ろに下がりません。
ちなみに急斜面の発進では教習所で教わるサイドブレーキを使う方法で発進します。
これならエンストしても手順がシンプルなのでまたすぐに発進まで持っていけますね。
裏ワザ坂道発進はいつまで使うのか
裏ワザと紹介した先の方法ですが、実はこの裏ワザをマスターすることが坂道発進の上達のためのステップアップに繋がります。
どういう事かというと、先の裏ワザの手順3のブレーキを踏んで半クラッチにする操作と手順4のアクセルを踏む操作を段々と早くして行くと手順3と4の境目が段々なくなり、最終的には坂道で平地と同じ発進方法をしていることになります。
なので、手順3,4が高速で操作できるように練習してください。
裏ワザ坂道発進
- クラッチを切りフットブレーキで停止
- ギアを1速に入れる
- ブレーキを踏んだまま半クラにしてそれをキープ
- ブレーキを離しアクセルを踏み発進
坂道で平地と同じ発進
- クラッチを切りフットブレーキで停止
- ギアを1速に入れる
- ブレーキを離しアクセルを踏む
- 半クラにして発進
どちらの方法も手順3と4が高速で行われると最終的には同じ手順になると言うカラクリです。
なので裏ワザの坂道発進方法をマスターすると、坂道発進が平地で発進するのと変わらなくなる、つまり平地も坂道も関係なくなり坂道発進の苦手意識は克服できるようになるのです。
後ろに下る恐怖を克服
サイドブレーキを使わない発進では急な坂ではどうしても後退してしまいます。
車が後ろに下ると慣れていないとかなり焦ります。
後ろにさがる恐怖を克服するには練習するというより「認識・体験する」ことが重要です。
坂道発進で後退する事に恐怖するのは至って自然な反応です。自分のは前に進みたいのにその意思に反した後退という挙動を車がした場合、自分がそれに対抗する手段を持ち合わせていないと車に自分が乗せられている状態、つまり自分のコントロールを車が離れた場合に人は恐怖するのです。
小さい頃に自転車を補助輪無しで乗れるようになった時のことを思い出してみてください。
支えてないと倒れてしまう自転車に乗っても倒れるに決まってると子供ながら本能的に感じ、倒れることに対する対抗手段を持たず自転車をコントロールできない自分は恐怖し自転車に乗ることに躊躇します。
ところが、実際に自転車に乗っている人を見てしまうと転倒を防ぐというコントロールが可能である事を認識し、さらに体験を通してそのコントロール方法も身に着け恐怖を克服します。
前置きが長くなりましたが、実際に車がどのくらい後退するか体験して見ましょう。
坂道での後退を体験
坂道で停止し、クラッチを切りブレーキを離し傾斜に対してどのくらいの速度で後退するか確認します。
ブレーキを踏んだり離したりして、車が後退しだす速度や移動距離を体験し確認しでください。
思っているほど車は下がっていないと思いませんか?
確か自動車教習所の実技試験で坂道発進で1m以上後退したら即試験中止だったかと思います。
なのでまずは後続車と1m後退はできる車間がある想定で(あくまで仮定の話ですよ)、1m後退するのに何秒掛かるか確認してみて下さい。
傾斜にもよりますが、おそらく3〜4秒掛かると思います。
思っているほど車は下がらないというのが実感できれば車が下る恐怖は克服できたらと言えるでしょう。