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ヒールアンドトゥは必要か?それとも不要か?

運転技術
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ヒールアンドトゥといえばMT車ならではのドライブテクニックです。
つま先(トゥ)でブレーキングしつつ踵(ヒール)でアクセルを煽りシフトダウンを行うことからその名がついています。

このようにヒールアンドトゥは操作の難易度の高さ故、それが出来ることがドライビングスキルの高さの証明にもなることも少なくありません。

しかしヒールアンドトゥが出来ることがマウンティングの材料とされてしまうことも多々あり、ヒールアンドトゥができるひととできないひととの間でヒールアンドトゥの必要性についての論争が起こることもしばしばあります。

果たしてヒールアンドトゥは普段のドライブで必要なドラテクなのでしょうか?

ヒールアンドトゥをやる目的

そもそもヒールアンドトゥは何のためにやるドラテクなのでしょうか?

まずヒールアンドトゥをやる目的ですが、それは
「ブレーキングで減速した後再加速するときにエンジンパワーが効率的に発揮できる状況にする」
ことが目的です。

これを実現するために
「ブレーキング」+「ブリッピングを使ったシフトダウン」
といった2つのドライビングテクニックを組み合わせ、それを(ほぼ)同時に行います。

ブレーキングは右足、アクセル操作であるブリッピングも右足、シフトダウンのためのクラッチ操作は左足で行います。

これを同時に行うためには右足がもう一つないとできませんが、それを実現させるため右足つま先でブレーキング、右足かかとでブリッピング、つまりヒールアンドトゥをする必要があるわけです。

ヒールアンドトゥを使わないとどうなるのか?

ヒールアンドトゥを使わず普通に「ブレーキング」+「ブリッピングを使わないシフトダウン(教習所で教わるシフトダウン)」ではだめなのか?という疑問に思うかもしれません。

わざわざブリッピングなんかしなくても教習所で教わる通りの操作でシフトダウンができるのになんでわざわざヒールアンドトゥなんてするのか?と思うかもしれません。

しかし、ブリッピングを使ったシフトダウンをするのにはそれなりの理由があり、それを説明するためにはまずガソリンエンジンの特性を知っておく必要があります。

ガソリンエンジンの特性とは

ガソリンエンジンはどんなエンジン回転数でも同じパフォーマンスが発揮できるわけではなく、エンジンパワーを効率的に発揮できるエンジン回転数が決まっていて、ある回転数からある回転数の区間でエンジンパワーを効率的に発揮できるという特性があります。

この回転数の区間、つまり幅のことを「パワーバンド」と呼びます。

以下は車速線図と呼ばれる各ギアにおける車速とエンジン回転数の関係を表したグラフです。
一般的にパワーバンドは最大トルクを発揮するエンジン回転数と最大馬力を発揮するエンジン回転数の間と言われています。(下記グラフでは赤色塗りつぶし部分)

ブレーキングすると車速に比例してエンジン回転数が下がって行き、そのままの状態でブレーキングし続けるとやがて回転数がパワーバンドからはずれてしまいます。

パワーバンドを外した場合、エンジンパワーが十分に発揮できずアクセルを踏んでも加速がもたついた状態になります。

そうならないためにはエンジン回転数をある程度保ったままシフトダウンする必要がありますが、その時のテクニックとして使うのがブリッピングを使ったシフトダウンになります。

ブレーキングしながらブリッピングのシフトダウンつまりヒールアンドトゥをすることでブレーキング後の再加速の時でもエンジン回転数は保たれ、エンジンパワーが発揮されスムーズな加速が行えるようになります。

ヒールアンドトゥか必要になる状況

ヒールアンドトゥが必要になる状況とはヒールアンドトゥをやる目的である「ブレーキング後の再加速でエンジンパワーを発揮できる」必要がある状況となります。
しかしこれは非常に限らた状況でありそれはカーレースなどで一分一秒を競う状態でコーナーを曲がるときくらいになります。

ブレーキングした後の加速でもたつくとタイムロスになるのでヒールアンドトゥを使います。

このような理由からカーレース以外の状況でヒールアンドトゥが必要になることはなく、公道で必要になることは基本ないというのがヒールアンドトゥの必要性についての結論となります。

なのでヒールアンドトゥ不要論派の主張として最も多く言われている「公道では必要がないドラテクなので不要」というのは概ね正しいと言えます。

公道でヒールアンドトゥをやる理由

公道ではヒールアンドトゥが必要になる状況は基本なく不要であるというのが先の結論でした。

しかしヒールアンドトゥは不要であってもやることにまったく意味がないわけではありません。

必要に応じて以下のような理由で公道でもヒールアンドトゥをやる意味はあります。

  • 減速からスムーズに再加速できる
  • MT車の運用の幅が広がる
  • 操作が只々楽しい

減速からスムーズに再加速できる

公道でも減速してから再加速する状況はいくらでもあります。
例えば交差点や山道などのきつい下りカーブなどです。
別にヒールアンドトゥをしなくてもこれらのカーブは普通に曲がれますし、エンジン回転数もパワーバンドで回す必要はありません。
しかし、ヒールアンドトゥをすることでブレーキングと同時にシフトダウンも完了するためブレーキング完了後にすぐに加速に移れスムーズなコーナリングができます。
別にパワーバンドを意識する必要はなく、ブレーキング->シフトダウン->加速の流れがスムーズになるだけでもヒールアンドトゥをやる効果は十分にあります。

MT車の運用の幅が広がる

ヒールアンドトゥができることでMT車の運転の幅が広がります。

ヒールアンドトゥは「ブレーキング」+「ブリッピングシフトダウン」の組み合わせです。

ブレーキングだけをやるときというのは頻繁にあります。
ブリッピングシフトダウンだけをやる時もそこそこあります。
なのでこれらの状況が重なればブレーキングとブリッピングシフトダウンの両方つまりヒールアンドトゥが必要になる時があるということです。

逆に言うとヒールアンドトゥができるということは状況を選ばずブレーキングもブリッピングシフトダウンもそれを同時にやることも自在にできるというこであり、如何なる状況になろうとも対応できることになるので運転の幅が広がります。

実際のところヒールアンドトゥは先のコーナーを見据えある程度狙ってやることもありますが、慣れてくるとなんとなく運転していてブレーキングしてたらエンジン回転数が下がってきたのでブリッピングしてシフトダウンしておくか程度の感覚でヒールアンドトゥをやるようになってきます。
刻々と変わる状況に対して自然と臨機応変に操作ができるようになるというのが運転の幅の広さを感じさせます。

余談ですが、普段運転してるといまのAT車の多段階化されたギアやCVTの登場でどんなシチュエーションでも減速からの加速がスムーズで驚きます。
なので普通にコーナーとかを曲がるにしてもAT車の後をついていくとブレーキングした後いい感じで加速してく車がいますので後れを取らないようそして後続に迷惑をかけないようにと前の車ついていとヒールアンドトゥを使わないといけないときがあります。

操作が只々楽しい

まあ、なんだかんだ言ってやっぱりMT車は操ってるという感覚がたまらなく楽しくまたそれが醍醐味でありヒールアンドトゥはまさにその代表格なんですよね。
ヒールアンドトゥは操っている感を存分に楽しむことのできる操作なので楽しくて仕方がないのです。
なので自己満足でヒールアンドトゥをやってしまう時もあります。
え?そこでヒールアンドトゥいる?みたいなところで無駄にヒールアンドトゥしてみちゃったりします。
ただの平凡な交差点で速度も全然出てないのにまるで信号待ちしている人たちにアピるように無駄にシフトダウンしながら交差点に進入して最後にヒールアンドトゥで締めくくり交差点を曲がっていくというなんとも意味のないヒールアンドトゥをやる人もいます。(はい、私です)

ヒールアンドトゥをやるにあたり気を付けること

ヒールアンドトゥ自体は危険な操作ではありません。

よく「ヒールアンドトゥは危険だから公道ではやるべきではない」と言われますが、ヒールアンドトゥに限らずどんな操作でも正しく行わなければ危険であることに変わりはありません。

ただヒールアンドトゥは操作がほかの操作に比べて複雑なのでしっかり練習してある程度マスターしないと正しく操作ができないことから危険と言われます。

ヒールアンドトゥをやる上で絶対に忘れてはいけないことは「ヒールアンドトゥはブレーキングを最優先に操作する」ということです。

しっかりとしたブレーキングがあってこそシフトダウンに移行する意味があるのでまずはブレーキングに集中し、シフトダウンは二の次と思って操作して下さい。

ブリッピングのアクセル加減や、シフトダウンのクラッチ操作に気を取られてブレーキングが疎かになってしまってはそれこそ危険な操作になってしまいます。

まとめ

ヒールアンドトゥをやる目的は以下の通りです。

「ブレーキングで減速した後再加速するときにエンジンパワーが効率的に発揮できる状況にする」

この状況を実現するために「ブレーキング」+「ブリッピングを使ったシフトダウン」といった2つのドライビングテクニックを組み合わせ、それを(ほぼ)同時に行います。

ヒールアンドトゥが必要になるのはカーレースくらいで公道では基本必要はないです。

ただヒールアンドトゥができることで普通よりスムーズな運転ができるようになることやMT車の運転の幅そのものが広がること、そして何よりMT車の醍醐味である操っている感を楽しむことができます。

ヒールアンドトゥができるできない、必要か不要かということについて議論をしたところで公道ではヒールアンドトゥは必須ではないのでその議論の結論すでに出ています。
必須ではないですが不要なわけでもないのでヒールアンドトゥはできるに越したことはないということです。
ヒールアンドトゥができるようなってから運転してみてそれをやるかやらないかを選択すれば良いだけだと思います。

それでは良いカーライフを。